こんにちは、TETSUです。
欧州サッカー2018-19シーズンでは波乱が起きました。
世界で最も注目されるサッカーの大会であるUEFAチャンピオンズリーグ(CL)で躍進を遂げたのは、
オランダの名門クラブ「AFCアヤックス」です。
近年は国際大会で低迷していましたが、2018-19シーズンのCL準決勝まで進み、4強(ベスト4)になりました。
CLの決勝トーナメントでは、世界的強豪クラブで優勝候補の2チームに勝っています。
アヤックスvsレアルマドリード 5-3
アヤックスvsユベントス 3-2
今回は、若手選手が中心ながら、各国の強豪に勝ってきたアヤックスの試合分析を行いました。
アヤックスの戦い方を解説します。
アヤックスのフォーメーション
アヤックスのフォーメーションとシステムは、下の画像の通りです。
アヤックスのフォーメーションは、
GK/4DF/3MF/3FWであり、「1-4-3-3」のシステムです。
ですが、このシステムは試合中に流動的に変わります。
「1-4-2-3-1」、「1-4-1-4-1」、「1-3-4-3」、「1-3-1-2-1-3」など様々な形に変わります。
アヤックスを指揮している、49歳のエリック・テン・ハーグ監督はポジショナルプレーやカウンター攻撃を使い分け、面白いフットボールを体現しています。
アヤックスには若い選手が多いです。
キャプテンでCBのデリフトは19歳。この年齢でプレーの安定感、体の強さ、テクニックのレベルが高いのは、化け物ですね(笑)
アヤックスの攻撃
アヤックスは、
・相手の守備陣形が組織化される前に攻撃するカウンター攻撃 ・相手の守備が組織化されても、早く縦に攻撃をする直接的な攻撃やコンビネーションプレー
などの様々な方法で攻撃をしていく手段を持っています。
では、アヤックスの各攻撃の方法やポイントを順に解説していきます。
アヤックスのポジション攻撃
アヤックスのGKがボールを持ってそこから攻撃がスタートする時、アヤックスはポジション攻撃をします。
ゴールキックなどのSalida de balón(攻撃のスタート/ビルドアップ)やCBからGKにバックパスをした後などの、ゾーン1から2への前進の場面。
その時の、各選手のポジションニングは、下の画像の通りです。
(アヤックスは黒色のユニフォーム)
2人のCBはGKの左右に広がり、GKからのパスコースを確保します。
その間にシェーネかデヨングが入ってきてパスのオプションを増やします。この2人はナナメの関係性を保ち、流動的に動くことで相手がプレスをかけにくくなり、パスコースも作りやすくなります。
2人のSBは高い位置を取ります。
3FWとトップ下のファンデベークは、深さを取り相手のディフェンスを引きつけるために前に張ります。
CBの間に動くシェーネかデヨングに相手がついていき、前線は4枚で相手を止めているので、相手は間延びします。
そこで空いてくるのは、真ん中である中盤。
もっと空いているのは中盤のサイドである、アヤックスのSBの所です。
相手がそこを埋めたら、他の選手が空きます。
ボールを前進出来ずにDFの位置で追い込まれた時の為に、GKとCBで1つ目の三角形は維持していますので、簡単にボールを失わない形をアヤックスは作っています。
ユベントスとのCLセカンドレグでは、ユベントスのプレスが強く、アヤックスのやりたいようなSalida de balón(攻撃のスタート/ビルドアップ)でのポジション攻撃が出来ていない事が多くありました。
ですが、アヤックスの選手達は、パスを繋ぐテクニックがあり、どこかでフリーな選手を作れる状況にしています。
より正確に前進するためには、GKのオナナのキック精度次第でしょう。彼のキックミスによってのボールロストもありました。
アヤックスのカウンター攻撃
アヤックスが相手からボールを奪い、攻撃をスタートした時にまず狙うのは、前への早い攻撃であるカウンター攻撃です。
カウンター攻撃の教科書通りである、前方向への縦への動き出しを行い、相手の裏のスペースを狙って攻撃を行います。
そのときに、まず前への抜け出しを行うのは、両サイドFWのネレスとツィエフです。
センターフォワードのタディッチは偽トップの様な役割を行っています。
これがどういう事かというと後ろに下がってくる動き出しで、低い位置でボールを受けるポストプレーをする役割です。
下の画像をご覧ください。
アヤックスはボールを奪い、FWのタディッチにボールを当てますが、タディッチは下がってボールを受けています。
そして両サイドのネレスとツィエフは、裏への抜け出しを行っています。
・タディッチが下がることにより、相手ディフェンダーの意識が前に行き、裏への意識が下がる。
・相手ディフェンダーの真ん中であるCBが抜けて、そこをカバーがしにくい
・CBを引き出し、よりスペースを作れる
・中央でボールを受けることにより、攻撃の選択肢が左右どちらのサイドも持てる
アヤックスの前線4枚、タディッチ、ネレス、ツィエフ、ファンデベークは流動的に自由に動きながら攻撃を行うことも多いです。
カウンター攻撃の時でも、状況に応じて自由な縦への方向に抜け出しています。なので、相手もマークをつきにくくなっています。
そしてサイドのレーンはSBがオーバーラップをして使います。
下の画像でも、4枚のポジションは変わっています。
アヤックスのコンビネーションプレー
ゾーン1からのポジション攻撃をして前進した後や、カウンター攻撃が出来なかった後にアヤックスが行う攻撃の方法は様々です。
相手の裏にロングボールを蹴るシンプルで直接的な攻撃も行いますが、基本的にはパスを繋いでいくポジション攻撃を行います。
このアヤックスの攻撃でのポイントは主に2つです。
・ロンド(鳥かご)の状況を作る
・2つ前のラインを使う
1つ目のポイント「ロンド(鳥かご)の状況を作る」です。
まずは、選手の距離間を近くし、パスを繋げやすい状況を作ります。
というのも、ボールの近くに3~5人がスライドしてきて、ボールを持っている人と三角形を多く作ります。
試合中にロンド(鳥かご)の状況を生み出し、狭いエリアを打開しやすくするのです。
アヤックスの選手たちは、このような狭い中でのボールを扱うテクニックが高いので、選手のレベル的にもボールを回す上での問題はありません。
この時の、各選手の配置はそこまで決まってはいません。
カウンター攻撃でも説明したように前線の4枚は流動的に動きますし、2ボランチも攻撃時には流動的にスペースに動きます。
ロンド(鳥かご)を作ると言っても、バルセロナのように主にボールを動かすようなものではなく、人がスペースに抜け出しながらのロンドで前進していくようなものをアヤックスは行います。(パス&ゴーのようなイメージ)
これは、上の画像のようなゾーン2でも、ゾーン1でも同じようなイメージです。
ゾーン1では、もっと選手の距離間が近く、人数も多かったのですが、
それは、アヤックスの守備が選手の距離間を近くしてボールを奪いに行く状況が多く、ボールを奪ったあとには既に何人かの選手が近くにいる中からの攻撃のスタートなので、人数が多いロンドの状況がゾーン1では作れていました。
2つ目のポイント「2つ前のライン間を使う」です。
ゴールキックも、ゾーン1から2への前進の時も、
「ボールの1列前で引き付け、その1つ前を使う」というような相手の背後を使う攻撃をアヤックスはしていました。
下の2つの画像の状況を例として、解説します。
ボールはCBが持っていて、ボランチのデヨングとシェーネは斜めの関係性を保ちながら自由に動きます。
ここでは、デヨングがCBの間に落ち、その前にいたシェーネが一度ボールを受けました。
ちなみにこの時も、両SBは幅を取って、フリーな状況を保っています。
アヤックスのボランチ2人の動き出しとパス交換で、相手の6人が前にプレスに来ています。
6人だけ。
他の4人は後ろに残ってしまっています。
それは、アヤックスの3FWが深さをとって、前へ張っているからです。
そうなると空くのは、「2つ前のライン」です。
下の画像は、先程の後の状況です。
相手のユベントスはさっきよりも前へ来ているので、その後ろが空いています。
画像でいうと、赤色のラインのところです。
これが、アヤックスの攻撃での「2つ前のラインを使う」という意味です。
ボールのある1つ前のラインで引き付け、その後ろを空ける。
画像でいうと、黒色のラインに相手を引き付けて、赤色のラインを空ける。
このディフェンス側は、赤色のラインを1人で守るのは厳しい。
ここでは、ファンデベークがボールを要求していますが、偽FWのタディッチなどもこのスペースに動いてきます。
又、ゴールキックの時と同じように、両SBは広がって、2ライン前の赤色のスペースで、相手の背後を取りフリーになっているので、サイドへの展開から攻撃も可能。
「2つ前のラインを使う」の別の言い方として、「相手MFとDFの間を使う」という言い方もできます。
これは、相手のユベントスのDFラインの押し上げが甘いという事もあります。
ですが、DFラインが押し上がるとアヤックスはDFラインの裏のスペースを使った速い攻撃ができるので、そのDFラインの裏への攻撃を警戒して、押し上げにくい状況になっていたのかもしれません。
アヤックスのGKがボールを持った時のポジション攻撃のときにも、この形を作っています。
下の画像です。
アヤックスはこのような状況を作り出します。
選手の距離間を近くし、多くの三角形を作り、ロンドをしながら、2つ前のラインである相手のMF-DFの間を使い、前へ前進しています。
なので、この2つ前のラインにボールを運び、その後すぐにFWに当ててすぐにフィニッシュまで行くことも多いのです。
ほんの2,3本のパスでシンプルに攻めることもあります。
また、相手のプレスにより押し込まれる時間が長く、この前進ができない時には、前線の3人を前に走らせる「相手の裏にロングボールを蹴るシンプルな直接的な攻撃」をアヤックスは行っています。
アヤックスの守備
アヤックスの守備面についての試合分析した内容を解説します。
アヤックスは、相手陣地でのゾーン3やゾーン2での守備の時には、基本的にマンツーマンでディフェンスをして、前から厳しくプレスに行きます。
相手がバックパスをした時なども、前からプレスをしやすいように全体で前に押し上げます。
この時のマンツーマンでは、相手のCB1人か逆サイドの選手を捨てているので、味方の最終ラインで1人余り、マンツーマンディフェンスをする上でのリスク管理は少なからず出来ています。
1人1人のプレスの厳しさと、粘り強さ、数人でカバーをし合える距離間、嫌な状況で突破されそうならファールで止める。などの良い形も多いので守備が弱い訳ではありませんが、
アヤックスの守備での大きな穴は、2箇所。
1つ目は、「逆サイド」。
ボールに多くの選手が寄ってディフェンスをしているので、味方同士でカバーをしやすく、スペースを消して奪いやすいという面や、奪った後に数人でロンドを形成しボールを回せるメリットなどもありますが…
マンツーマン守備でのでリスク管理でCBが1人余るために、逆サイドの相手を捨てているので、その相手と共に大きなスペースを放ってしまっています。
下の画像のシーンでは、ユベントスの選手3人が手を上げて、アヤックスの守備が手薄な逆サイドを攻めるべく、サイドチェンジを指示しています。
アヤックスは、パスを出されたらスライドするが、そんなに早くスライドできるわけでもないので、遅れてついて行くことになってしまうのです。
アヤックスは選手の距離間を近くして、ボールを追い込んで囲い込むような守備をするので、逆サイドに展開される事が増えると中盤でスペースが空いてきてしまいます。それによって奪い返したあとも、アヤックスにとって理想な形にはならない。
2つ目は、「DFラインの裏」。
アヤックスは、DFラインを上げてコンパクトにした状態でのマンツーマン守備なので、相手陣地での守備をしている時も、アヤックスが攻撃をしている時も、DFラインの背後に大きなスペースを残してしまいます。
マンツーマンということもあり、4人のディフェンダーもDFラインから積極的に前に出てプレスやインターセプトやアンティシィパシィオンをしに行く事も多いです。
そのため、アヤックスのDFラインにスペースが空くことも何度も見受けられました。
2つ前に解説した画像のシーンでも、アヤックスのDFラインはガタガタで全く整っていません。
GKが前でカバーをすることもありますが、エリアより前でガッツリ全てのボールをカバーするわけでも、できるわけでもないのです。
下の画像のシーンでは、サイドチェンジをさせられ、そのままアヤックスのDFラインの裏に攻められました。アヤックスが1番苦手な形。
ペナルティーエリア付近で大きなスペースを相手に与え、そこで1対1の状況に持ち込まれています。
さいごに
アヤックスの試合分析を行いましたが、2018-19シーズンのアヤックスは率直に良いチームという印象を受けました。
私はスペインサッカーのリーガ・エスパニョーラばかり見るので、アヤックスの試合は普段は全く見ないのですが、このチームのサッカーにとても興味が湧きました。
普段は全く見ない初見のチームで、ユベントス相手に苦戦をしていたので、アヤックスについての試合分析は難しかったですが(笑)
若くてレベルの高い選手が多いアヤックスですが、来シーズンにまたメンバーが大きく変わってしまうのは、「育てて売る」中堅チームの宿命です。
(私の好きなセビージャもそうなので、選手がいなくなっていく寂しい気持ちとなかなかチームが強くならない気持ちはとてもわかります笑。)
この完成度の高いチームをCLの決勝でも見たかったですが、ベスト4まで進んだことはアヤックスの歴史の残る偉業でしょう。
Twitterもやっています。
ご覧いただきありがとうございました。
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