こんにちは、TETSUです。
私事ではありますが、久しぶりのブログ記事です。
今回も、サッカー試合分析を行いました。
2019年J1リーグ 第18節「横浜F・マリノスvs大分トリニータ」の試合です。
以前に何度も横浜F・マリノスの試合分析を行い、このブログにアップしてきました。
横浜F・マリノスの攻撃的なサッカー【アタッキングフットボール】については、以前の試合分析の記事で詳しく解説しています。
これを読めば、マリノスのサッカーについて大体理解できるので、是非御覧ください。
ブログ記事をアップしていなかった期間も、横浜F・マリノスの試合はぼちぼち見ていました。
負けた試合もいくつかありましたが、前節の大分トリニータ戦はチームとして上手くいっていた点が多くありました。
試合分析はここ数週間行っていなかったので、久しぶりにマリノスの試合分析を行うことにしました。
横浜F・マリノスのシステム
横浜F・マリノスのシステムとスタメンは以下の通りです。
(青が横浜F・マリノス、白が大分トリニータ)
横浜F・マリノスの試合開始時のシステムは1-4-2-1-3ですが、この数字はマリノスにはあまり関係ありません。
マルコス・ジュニオールがトップ下のシャドーストライカーの位置に入ることはここ数試合と同じで、他の変更点は右SBくらいです。
あまり選手やシステムを変えないポステコグルー監督ですが、選手達もこのメンバーで慣れてきているように見えるので、結果も含めてチームが良い方向に進んでいるのかと思います。
横浜F・マリノスの攻撃
先程にも書きましたが、横浜F・マリノスの行うアタッキングフットボールについての試合分析は、すでに行いました。
なので、今回の試合分析は、以前の内容を踏まえた上で、この大分トリニータ戦にフォーカスして試合分析をしました。
ですが試合を見ていると、以前のやり方から変わっていて、より成長している点もありました。
この試合でのマリノスの攻撃について説明します。
マリノスの攻撃について説明をする上で、ポイントとなる大分トリニータの守備のやり方が2つあります。
・2FWでプレスに行くが、GKへプレスはしない
・スライドが甘い5バックになり、後ろが重くなる
この2つのポイントによって、マリノスは大分楽に戦えました。
簡単なゾーン2までの前進
大分トリニータの前線からのプレスは、言ってしまえば曖昧でした。
1-5-3-2の並びで2人のFWからプレスに来ますが、GKへはプレスはかけない。
3人のMFでその後ろをカバーしようとしていますが、残りの5人のDFはそこまで連動できていない。
FWがどうボールを誘導して、チームとしてどこでボールを取りたいのか。それが感じられず、5人のプレスが無駄働き状態でした。
下の画像のシーンでは、大分トリニータはゾーン2からのブロックを作りプレスをしています。
2人のFWはマリノスのセンターバックにマンツーマン状態なので、2列目の3人でマリノスの4人を抑えなければいけません。
マリノスの中盤は数的優位なので、選手の距離感だけ悪くなければ、簡単にボールを前進させられ、5人のディフェンスを突破できます。
黒色の四角形、ここでは喜田が後ろに降りてきて、左サイドのレーンの喜田とティーラトンで2×1です。
その後のプレーが下の画像です。
喜田の位置で1人の選手を釣ったので、相手の矢印の逆をついて、簡単にティーラトンにボールが渡りました。
更に、大分トリニータのDFラインは背後のスペースを気にして後ろに下がるので、前線からのプレスに連動できておらず、DF-MFの間にスペースができます。
ディフェンスの前方向のプレスが連動しておらず、ティーラトンは前を向いてボールを受けられるので、正面を向いたままマリノスの前線への配給ができます。
この程度の、選手たちの流動した動きからのボールの前進(2×1、数的優位からの前進)は、今のマリノスは問題なくできます。
それは、ここ数試合のマリノスの攻撃を見れば分かります。
特に、ボランチでプレーをしている喜田と天野の、この気が利くポジショニングは素晴らしいです。
シーズンの初めの頃などは、両サイドバックが中に絞り過ぎていて、中盤で幅を出せないことも多く、このような状況でもボールを前進できなかった試合もありましたが、今回は広瀬とティーラトンは広がり幅を取れています。
以前までは、CBの位置の正面にサイドバックで、サイドへのパスコースは直接ウイングの選手になっていたので、相手も前向きでのディフェンスでプレスがかけやすかったのですが、
今回の試合のようにその間で1人を経由するプレーをできるかで、1列前への前進がスムーズになります。このような相手を見ながらのプレーをずっとやってほしいと思っていました…
マリノスが臨機応変に上手くプレーをしていたと言えるのですが、大分トリニータの守備に問題があったとも言えます。
大分トリニータは、ボールの奪い所とプレスの開始時点を明確にしていなく感じる守り方をしていた。
明確にしていたのであればそれが機能していなかった。
マンツーマンで対応するのであれば、最終ラインに1人選手が余る必要があるので、逆算するとFWは1人で相手2CBにプレスにいくのが原則。あるいは、逆サイドの相手へのマンマークをやらずに全体で中に絞ることが必要。しかし、マリノスの2CBを抑えるために前から2人でプレスに行き、尚且最終ラインでのカバー要員の選手がいるので中盤での数的不利によってプレスが連動できずにズレが生じる。中盤での数的不利にも関わらず、先程のシーンのように中盤が前に出てプレスをするのであれば、尚更スペースと相手をフリーにしてしまう。そこでのマリノスの中盤の距離感とポジショニングが良いので、大分トリニータのボランチはカバーしきれない。
少し単調に書いてしまいましたが…、ザックリ言うとこうです。
このような状況から、マリノスは自分たちのペースに試合を持っていけて、大分トリニータは受け身になっていました。
「マリノスが上手く対応していた」とも言えますが、「大分トリニータがマリノスの上手くいくようにディフェンスをしていた」とも言えるのです。
それでは、このような状況から、マリノスが上手くプレーをしていたパターンを他にもいくつか解説します。
ゾーン1での前進
先程の大分トリニータの守備でのポイントでも書いた通り、マリノスのGKがボールを持った時、大分トリニータはGKにプレスをかけません。
2人のFWでマリノスのCBを抑えてはいますが、その後ろの中盤では4対3でマリノスの数的優位です。
大分トリニータはボールが来るのを待っているのですが、GKのパスコースを限定していないので、どこで追い込んでどこで奪いたいのかが分かりません。
マリノスのパスミスを待っているようにしか見えませんでした。
マリノスの選手たちの距離感が良ければ、簡単に剥がされて前進されるのですが、これは今のマリノスにとって難しいことではありません。
下の画像のシーンでは、喜田が下がっているので、中盤では黒色の四角形で3×2の状況です。
マリノスのCBやボランチがあまり良くない状態でボールを受けても、GKが常にフリーな状態なので、簡単にボールが落ち着きます。
その時もGKへのプレスはないので、それによって中盤で自由に動いてポジショニングを変える時間ができますし、GKも余裕をもって自由にボールをスタートすることができます。
なので、マリノスはゾーン1での前進に苦戦はしませんでした。
スライドが甘い5バック
大分トリニータは5バックになっており、その弱点をマリノスは上手く突いていました。
先程にも書いた、大分トリニータの守備のポイントの2つ目。
「・スライドが甘い5バックになり、後ろが重くなる」
大分トリニータの5バックは基本的に、5人でマリノスの3人を見ている形になっています。
それだけで、最終ラインに2人余っているので、後ろに重くなります。
また、前線の5人は前から寄せていっても、DFラインに5人もいるので、DF-MFの間にスペースができます。
これが、プレスが連動していないということです。
5バックの前(5バックのDFとMFの間のスペース)にいるマルコスを、大分トリニータはマンツーマンでマークをしません。
なので、DF-MFの間にスペースができて、そこでマルコスがフリーになることが多かったのです。
大分トリニータのCBの島川がマークを付くことが多かったのは、そこにマルコスがいたからであって、無理にマークにつくことはしていませんでした。
5バックの陣形を崩さないことを第一に考えていたようで、マルコスが離れると彼はディフェンスラインに戻り、マルコスを深追いはしません。
この、「マークに少し付き、やっぱり戻る」という曖昧さ。
そこで、どこに穴が空くのかというと、DFラインのCBの位置です。
下の画像のシーンですと、マルコスとティーラトンの位置が逆になっていますが、ここにできるスペースには変わりありません。
このスペースは、大分の曖昧なプレスとスライドの甘さによってできていますが、マリノスが意図的に作っていたと考えられます。
ディフェンスラインから1人前に出ても、他の選手達でスライドをすれば、そこまでスペースができる訳でもないのですが、大分トリニータは5バックであっても、このスライドがとても甘かったです。
先程のシーンでも、他のCBや4人がバランスよくスライドできていません。高山から中にスライドして、鈴木がスペースを消さないといけません。
このように、CBが1人出てきてくれるので、それで空いたスペースにマリノスはボールを通そうとしていました。
下にある2つのシーンが同じような状況です。
上のシーンでも、大分トリニータの5バックのスライドの甘さが露出しています。
・左サイドの高山は意味もなく逆サイドでのマンマーク。
・三竿はディフェンスラインに合っていなく、カバーができない位置で1人
・エジカルをマークしている鈴木は、全体のスライドをできていない。最終ラインの中央でマンマークなので、カバーもできない。
・松本もサイドのマークを気にし、中央では無理をしてしまう守備これらの画像のシーンのように、この試合のマリノスの攻撃で、ロングキックが少し多かったのは、このスペースを使おうとしているためでした。
「試合前から想定して狙っていた」のか、「試合中に選手たちが気づいてやっていたのか」が気になりますが、恐らく前者でしょう。
そう思う理由は、後ほど説明します。
次の画像のシーンでも、大分トリニータの守備が後ろに重くなっています。
大分トリニータの両サイド(高山、松本)は、マリノスの両ウイングをマークするので、後ろに下がりめになります。
このようなシーンで良かったのは、両ウイングの仲川と遠藤が中に絞ってこられること。
それによって、相手の3CBが前に出てこず、マルコスがフリーになりやすくなります。
そして、大分トリニータのサイドの高山は、低い位置でウイングへの対応をする為に前にプレスにはいかないので意味もなく後ろに残っています。
最終ラインで2人も余って、大分トリニータの守備は後ろが重いままです。
先程のシーンでは、大分トリニータの左サイドへの指摘ですが、右サイドにも問題があります。
大分トリニータの右サイドの松本は、前への意識があるからか、内側へスライドすることと、中へ絞ることがとても遅かったです。
このシーンでは、サイドにティーラトンがいましたが、松本が見るべきところは中にいる遠藤です。
このように、中に絞ってきたウイングへのマークを離したり、内側へのスライドができていなかったりで、大分トリニータは右サイドのスペースを使われ放題になっていた回数が多くありました。
大分トリニータの右サイドの松本とCBの島川を釣り出し、2人のスペースをマリノスは何度も突破していたのです。
この釣り出す作業を何度も行えたのは、ここまで説明してきた要点があったからこそです。
「前回のマリノスの試合分析記事」でも説明しましたが、マリノスは2列目からの選手の抜け出しのやり方として、中央から外方向に選手が抜け出すパターンがありました。
下の画像を御覧ください。
① が以前まででよくあった崩しのパターン
② が今回の試合であった崩しのパターン
今までのパターンであった①だと、少し単調なラインの突破方法です。これでは、相手のディフェンスラインの裏に抜け出した選手が、外方向を向いてしまいます。
せっかく相手のDFラインを突破できたとしても、ゴールに迫っては行きにくいので、そのままスムーズに中へえぐっていくプレーは起きにくいです。
ですが、今回の試合では②のパターンが多かったです。
遠藤やティーラトンが行っていたように、外から中方向に選手が抜け出しており、相手のDFラインを突破して、そもままゴールに迫っていけるパターンを作れていました。
・マルコスの位置(DF-MFの間)で、相手のCBを引き出す
・他のDFラインの相手選手を固定する
・ウイングが中に入り、サイドバックが広がる
相手のDFラインを崩し、そこのスペースに選手が流れてくるのですが、その選手が中方向(ゴールに迫れる方向)に向かって入ってくる崩しのパターン。
どうやってCBを引き出して、DFラインを崩すのかが難しいところですが、マリノスの選手たちは流動的に動きつつ、これを何回かスムーズに行っておりました。
たまたまかもしれませんが。
特に重要なのは、マルコスの位置でプレーする選手だと思いますが、
この各役割をマルコスだけでなく、天野とティーラトンなどで変化しながらできていたので、これはさすがに試合中に相手を見ながら自然とやっていたのではないと思いました。
なので、このCBの抜けたスペースにためらわずロングボールを蹴っていたのも、このパターンを行う狙いがあったからだと思います。
両チームの差
横浜F・マリノスと大分トリニータは、GKからボールを繋いでビルドアップするポゼッションのコンセプトが同じでしたが、試合のほとんどがマリノスの攻撃の時間でした。
両チームの差は、「縦パスの収まる回数」でしょう。
両チームのプレスの強度やディフェンス時の選手の距離感に違いがあることを踏まえても、
大分トリニータのボランチであった前田と小塚はバックパスが多く、横浜F・マリノスの喜田や天野のようにターンをして、縦にパスをする回数が少なかった。
GKまでプレスを受けている大分トリニータが、バックパスの回数が増えると味方も敵もよってくるのでパスが繋ぎにくくなるのは明白です。
その点、GKにプレスがかからないマリノスは、DFラインやボランチで多少追い込まれたとしてもバックパスで逃げられ、ゆっくり組み立てられるのでそこまで苦しくはありません。
前半には、大分トリニータがGKにプレスをかけ、マリノスがやりにくくなっていた場面もありましたが、それは1,2回だけ。
そして、前進された大分トリニータはズルズルとラインが下がるので、攻撃に転じる時にはMF-FWの間が空き、ボールが収まりにくい。
両サイドは守備によって位置が下るので、前に出るタイミングが遅れる。それによって大分のサイドチェンジを仲川がカットした場面もありました。
大分トリニータは守備での課題が攻撃にも繋がり、縦パスが収まる回数が少なく、自陣での時間が長くなりました。
さいごに
横浜F・マリノスの攻撃面(大分トリニータの守備面)での内容が多くなってしまったので、今回は横浜F・マリノスの守備面に関しての試合分析は省きます。
横浜F・マリノスの守備は、FWからGKへのパスコースを切り限定して、上手くボールを誘導できていました。
横浜F・マリノスのサッカーは試合を重ねるうちにより良くなっており、見ているのが楽しいですね。
喜田とのダブルボランチで調子の良かった天野が抜けるのは、チームとして大きなダメージになりそうですが、なんとか勝ち点を積み重ねてもらいたいです。
ご覧頂きありがとうございました。
コメントを残す